2013.09.18

タオルさん

どうもこんにちは、チュチュンのチュンこと小鳥チュンです。

 

本日のインタビューはタオルさんです。

対水分用の最小兵力でありながら汎用兵器。

吸い込んだ水は溢れるまで逃がさない。

太陽の光によって何度も回復するその生命力。

そして決して取れることのないクサイニオイとの因果な関係とは。

毛羽立ったその素肌に触れていきたいと思います。

 

 

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(静かに時を待つタオル氏)

 

 

─おはようございます!

 本日はよろしくお願いします!

 

おはようございます、よろしくお願いします。

今日はとてもいい天気ですね。

深呼吸しちゃいましょう!

ス-…ハ-…ス-…ハ-…

 

─深呼吸ですね、いいですね〜。

 

ス-…    ハ-…

 

─さすがタオルさん、全身で体中の水分を放出してますね。

 

ス-…..

 

─おっ、大きく吸い込んでからの〜?

 

 

─…からの〜?

 

 

─……からの〜…?

 

ハァ-!!

さあはじめましょう!

 

─はい早急にはじめましょう。

 それでは、タオルさんの日常について教えてください。

 

我々の日常は、呼吸です。

これに尽きますね。

呼吸といっても空気を吸って吐くのではなく、水分を吸って吐くという呼吸です。

これを繰り返すことで、我々ははじめてタオルになります。

何も吸い込まないタオルや絶対に乾かないタオルがあったら、それはタオルではありません。

ただの不思議な布です。

 

─不思議な布について教えてください。

 

えっ?

不思議な布についてですか…?

今ちょっと言ってみただけなので特にそれが何であるかわからないんですが…。

そうですね…。

タオルではないけど、タオルみたいな、でも違う。

みたいな感じでしょうか。

醜いアヒルの子、みたいな感じです。

なんかちがうなコイツ、みたいな感じです。

翻って我々タオルは不思議な布ではありません。

単純な構造の布です。

質問の内容がよくわかりませんが、我々は普通の布であり、不思議な布ではない、ということです。

 

 

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(もぞもぞして誤摩化すタオル氏)

 

 

─なるほど、なんとなくわかりました。

 それでは、水を吸い込むときの気持ちを教えてください。

 

水ですか。

まあ水分ですよね。

なんて言うんでしょうか、体が勝手に反応しますよね。

そこに水分がある、と感じたらもう、捕まえろー!みたいな気持ちになります。

空気中の水分でさえなるべく捕まえようとしています。

そうですね、言ってしまえば、我々は欲しているのです。

あらゆる水分を。

乾いた体でありたいと願いつつも、体が勝手に欲してしまう。

何て言うんでしょうか…。

ダイエットしているのに、おなかが減れば減るほどポテトチップスに手が伸びちゃう、みたいな所でしょうか。

 

─どちらかと言うと水に対しては敵対の気持ちはなく、反対に大好きな感じなのでしょうか。

 

そうですね。

我々は通常、乾いた状態で存在しています。

ですが、もしかしたら、水分を含んでひたひたになっている姿が、本来のあるべき姿なのかもしれません。

ひたひたに濡れたタオルと、かわかわに乾いたタオルが二つ並んでいたら、どちらがタオルらしいと思うでしょうか?

 

─そうですね……、どっちもタオルですね。

 

…ですよね。

私もそう思います。

どっちもタオルです。

きっとその二面性が、一つになって、初めてタオルになるんでしょうね。

そんなことはまあ置いておいていいのですが、そうですね。

水は大好きです。

結婚したいくらいです。

 

─結婚願望があるんですね。

 

もちろん、人並みにあります。

子供もいつかは欲しいと思ってますし。

まあ産めないですけどね、ハハハ…ハァ-…。

ス-…ハ-…ス-…ハ-…

 

あっ深呼吸…。

 

すみません、心臓が弱いもので。

やはり呼吸が一番大事なのでね。

 

─濡れたままの状態が続くと、どんな気持ちになるのでしょうか。

 

うーん…、本来の自分を忘れていきますね。

初期状態というんでしょうか、そういうものが書き換えられていく気がします。

外に出されたまま雨の日が続いたりして、濡れっぱなしになったりすることはあるのですが。

そうなってくると、わたくし元々濡れてるましたっけ?って思います。

なんか日本語おかしくなっちゃいましたけど。

冬に夏を思い出せない感じですね、逆でもいいですけど。

乾いてる状態がどんなものか、どんどん薄れていくというか。

そんな感覚になります。

さっきも言った通り、水は嫌いではないのでそこまで悪い気はしませんが、長引くと不安になってきますね。

このまま濡れっぱなしの人生なのだろうか、って。

でもよく考えるとそれもそこまで嫌じゃないかもしれない、って。

そうやって、自分が何を望んでいるのか、本当の自分がだれなのか、わからなくなっていくんです。

 

 

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(わからなくなっていくんです…と、ぼんやりとした恐怖にうなだれるタオル氏)

 

 

─そんな感覚になるんですか、なんだか恐いですね。

 それでは、ちょっと質問を変えて、タオルさんの好きな季節を教えてください。

 

季節ですか。

そうですね〜、季節関係なく晴れた気持ちの良い日は好きですが、季節で言うとそうですね..。

冬でしょうか。

あえて言うなら。

 

─冬ですか、なんだかちょっと意外ですね。

 その理由を教えてください。

 

冬はやっぱり、おもっくそ寒いじゃないですか。

それで、我々が外なんかに出しっぱなしにされてると凍るんですよね。

それがたまりません。

冬ならではの快感というか、醍醐味というか。

それが味わえるのが、他の季節と違って良いですね。

 

─よく朝方にパリパリになっていたりしますね。

 

そうなんです、そのパリパリがたまらないんです。

我々タオルは本来、やわらかでしなやかなのですが、そのときだけ、少し固くなれるんです。

ちょっとしたたくましさが自分でも感じられて良いんですよね。

それと、その凍った感じが昼間に徐々に溶けていく感じ。

あれもたまりません。

温泉で熱が骨までじわ〜っと入ってくる感じでしょうか。

ほどけてく〜っていう気持ちよさがなんとも言えず快感です。

 

─なんだか気持ち良さそうですね。

 

逆に嫌いな季節は雨が多い季節でしょうか。

梅雨前線とか秋雨前線とか、そういう季節はおもしろくないですね。

部屋の中も外も、朝も昼も夜も湿度も気温も変わらないので、もう、息苦しいです。

地球規模の密室に閉じ込められた気持ちになります。

 

─やはり雨期が嫌いなんですね、僕もあまり好きではないです。

 しかも、あの、ニオイがつくじゃないですか、それについて、教えていただけますか。

 

ニオイですか。

ほんとに勘弁してほしいですよね。

全身からクサイニオイがぷぉーんとしたときはたまったもんじゃありません。

人間でも、洋服が臭くなると死にたくなる、という話を聞きますが、我々の死にたさはそんな比じゃありません。

着ている服であれば脱いでしまえば難を逃れられますが、我々はそうはいきません。

芯にまでニオイが入ってきたりするともう、タオル生命の危機ですね。

それが原因で捨てられていった仲間も何枚も見てきました。

ちょっと洗濯してニオイが落ちないからって、アイツらすぐに捨てやがって…。

ウゥ…  ス-…    ハ-…

 

 

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(机にへばりついて深呼吸するタオル氏)

 

 

─まあでもタオルさんには悪いですが、あれは捨てたくなりますよ。

 どうにかならないんでしょうか。

 

あれは実は、体質があるんです。

同じ洗濯機で洗った同じタオルなのに、片方だけ何故かクサい!

ということ、あったりしませんか?

 

─ああ、なんかありますね。

 同じ環境で使ってるのに、特定のものだけが臭くなってくるのは、確かにあります。

 

あれはタオルの体質ですね、生まれ持ったものです。

人間の体臭と同じように、悲しいですが、元々、クサイやつがいるんです。

始めの方はわからないのですが、段々使って行くうちに露になっていくんです。

 

─そういったタオルについての対策はないんでしょうか…?

 

ありません…。

 

─…じゃあ、捨てるしかないですよね…。

 

まあ…。

そうですけど……。

そうなんですけどっ……ウゥッ!

ハァ-…ウゥ-…ハァ-…

 

─それでは質問に参りたいと思います。

 

どんとこい。

 

─タオルさんの夢は?

 

スポンジですね。

あの吸水力、憧れます。

 

─吸い込みたくないものは?

 

漂白剤ですね。

自分が自分じゃなくなっていく感覚、ゾッとします。

 

─吸い込みたいものは?

 

子供がこぼしたオレンジジュースです。

人の役にも立てるしオレンジジュースも味わえて一石二鳥です。

 

─タオルに生まれて良かったことは?

 

仲間がいっぱいいる、ということですね。

量産型の強みです。

 

─座右の銘は?

 

☆勧☆善☆懲☆悪☆

 

─今一番欲しいものは?

 

食器乾燥機。

 

─タオルの方々に一言。

 

毛羽立っていこうぜ!

 

─タオルを愛用しているみなさんに一言。

 

迷った時には深呼吸、歩き出す時も深呼吸。

 

─ありがとうございました!

 

ありがとうございましたー!

 

 

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(くったりとお疲れの様子のタオル氏)