2013.07.03
マグカップさん
こんにちは、小鳥です。
第三回になる本日のインタビューは食器棚の花形、マグカップさんです。
我々が普段コーヒーなどを飲む時、そこには必ずマグカップがあります。
オフィスのデスクに、会話の弾む食卓に、陽のあたるテラスに。
いつもあなたのそばで、そっと見守り続けている存在、それがマグカップさんです。
そんな日常の支え役であるマグカップさんの赤裸々なアレコレを問うてみたいと思います。
(「逆さになる事で精神を落ち着かせるのです」とマグカップ氏)
—こんにちは、小鳥です。
本日はよろしくお願いします!
どうも、マグカップです。
こちらこそよろしくお願いします。
—マグカップさん、いい声してますね。
えっそうですか? ありがとうございます(照)
—冗談ですよ!(笑)
それでは、さっそくインタビューの方に入らせていただきたいと思います。
……。
—まず、マグカップさんと他のカップとの違いと教えてください。
そうですね、最初に言っておきたいのが、マグカップという呼び方自体、少し間違っているんです。
これは自分もウィキペディアで見て知ったのですが、「マグ」という言葉自体が「蓋無し、片手付きの円筒形カップ」
という意味なんです。なので、マグカップというと「片手付きの円筒形カップカップ」になってしまうんですね。
マグカップというのはいわゆる和製英語で、日本語でしか通じません。
海外でマグカップを指すときは「マグ」だけでいきましょう。
—そうなんですか、知りませんでした。
そうなんです。
僕も、今日のインタビューのためにいろいろ調べてたら見つけたので、驚きでしたね。
他のカップとの違いはというと、先ほど言った通り、取っ手がついてることですね。
マグではない普通のカップは取っ手がついていないものを指します。
カップラーメンなどもカップと言いますが、取っ手がついていません。
もし取っ手付きのカップラーメンがあったらそれはマグラーメンですね。
—なるほど、詳しい解説ありがとうございます。
マグカップさんはあらゆる飲み物を包み込む素敵な方ですが、
ご自身ではどんなものを入れられたい、包み込みたいと考えているのでしょうか。
そうですね。
やはり熱いものですかね。
熱ければ熱いほど良いです。
—内容物というよりもその温度が重要ということなのでしょうか。
そうです。
熱いものをなるべく冷まさないように維持しておくというのが、主となる役割の一つなので、みんなそこに生き甲斐を見いだしていますね。
飲む人がふーふーして冷ましたりなんかしてると、自分の保温能力を認めてもらってる気がして嬉しくなります。
ちょっとこれは余談で、僕の先輩の話なんですが、あまりにも熱いものを入れらてしまい、割れてしまったんです。
それを目にした他のマグカップ達は、みんな感動していました。
漢(おとこ)だ、って言ってました。
マグカップなのでオトコもオンナもないんですけどね。
マグカップはみんな馬鹿なんです。
—熱いものを受け止める、というところがカップさん達の真髄なんですね。
はい。ですが、マグカップ界の中では最近、熱ければ熱いほどいいという風潮があって、それについて僕は嘆いています。
そんなのは、マグカップ達の自己満足でしかない。
結局先輩みたいに割れて死ぬだけです。
どれだけ注がれた状態で保てるかが重要なのに、みんな盲目になっているんです。
あと、カップさんっていうとややこしくなるので、マグカップさんかマグさんでお願いします。
—あ、わかりました、すみません。チッ
あれ? でもさきほどご自身でも熱ければ熱いほど良い、と仰っていましたが。
あ、本当ですね。
すみません、カットしておいてください。
(「ちゃんと考えて喋らなきゃダメだよ」とマグカップさんに耳打ちするマグカップ氏)
—わかりました、カットしておきます。(笑)
それでは、温度は別にして、入れられたいものはなんでしょうか。
これを言うと驚かれるかもしれませんが、食べ物系です。
スープなどを注がれると大変喜びます。
やはり、コーヒーや紅茶などの飲料に比べて入れられる機会が、まぁほとんど無いと言ってもいいくらい少ないので。
レア物という意味で、スープ系がいいですね。
また、スープ系の中でも、コンソメスープみたいなサラッとしたものではなくて、クラムチャウダーとかミネストローネとか具がたくさん入ったドロッとしたものだとさらに良いです。
スプーンで一口ずつ大事に食べてもらえるあたりが、至福の時間ですね。
そして、そういった物を食べ終えたときに、内側にスープがこびりついたりするんです。
それをごしごしと洗ってもらえるのがたまらないくらい気持ちいいですね。
普段はサラッとしか洗えてもらえないので。
—確かに、スープ系はなかなか注ぎませんね。
あるとしても、インスタントのカップスープとかくらいでしょうか。
そうですね、あれくらいでも十分嬉しいものです。
—注がれたものをかき混ぜる際にスプーンやマドラーなどが使われますが、
彼らとの関係性を教えてください。
僕たちマグカップの魅力の一つに、彼らとぶつかり合うときの音が挙げられることがあります。
かき混ぜる際の、かちんかちんという音です。
例えば純度の高いスプーンでかき混ぜられたときに発する音は、かすかに超高音が響いていたりします。
この音は、マグカップ、スプーン(マドラー)、注がれたもの、の三つのバランスで変化していきます。
セレブの間ではその音のために、マグカップやスプーン(マドラー)に何十万円とか何百万円とかの桁違いのお金を費やします。
マグカップと混ぜるものの関係は、持ち主のステータスにもなりうるものなのです。
なのですが、当の我々といえば、じゃれ合っているだけですね。
暴れ回るやんちゃなスプーンを我々マグカップがやさしく受け止める、という空気があるだけです。
—それでは、コップとの関係を教えてください。
食器棚などで近い場所にいることが多いかと思われますが、どういったものなのでしょうか。
これは、自分の口から言うのも恥ずかしいのですが、あいつらは僕たちに憧れていますね。
マグカップは冷たいものから熱湯までカバーできますが、あいつらは軟弱で、すぐに割れてしまいます。
落としてもすぐに割れますし。
ダメな奴らです。
—コップのことをあまりお好きではない感じですね。
いや、そんなことないっすよ?
きれいなんじゃないですか?
透明で薄くて、見えなくてどこにあるのかわからない感じで。
いいと思いますよ。
まあはやくいなくなれとは思っていますが。
—……嫌いなんですね?
いや、嫌いっつーか、嫌いっていうわけじゃないですけど。
まあなんていうか。
そのー。
嫌いじゃないですけど。
嫌いじゃないですけどー?
でも好きじゃないっていう?
感じですかね。
(コップとの撮影時、急に機嫌が悪くなるマグカップさん)
—わかりました。
それでは最後の質問に入らせていただきたいと思います。
よし、来い。
—生まれ変わるのなら何になりたいですか?
グラタン皿ですね。
耐熱性に憧れます。
—最後に注がれるとしたら何を注がれたいですか?
そうですね……ドロッと濃いものがいいですね…、なんでしょうか。
固まる前のコンクリートですかね。
—今まで注いだ中で一番熱かったものは?
アツアツに熱したごま油ですね。
少量でしたけど。
死ぬかと思いました。
—最後に何かひとことお願いします。
コップおまえ絶対割ってやるからな。
—それでは、これにてインタビュー終了です。
ありがとうございました!
ありがとうございました!
またお願いします!
(キッチンのみなさんとの集合写真)