2013.07.10

電源タップさん

どうもこんにちは、小鳥です。

 

今回のインタビューのお相手は電源タップさんです。

一つのコンセントを三つにも四つにも増やしてくれるという優れモノ。

コンセント氷河期の時代に電器の世界から舞い降りてきた天使の息吹。

一口で二度おいしいならぬ、一口で何口も使えるタップさん。

その使命に課せられた積年の呪いについて、じっくり聴いていきたいと思います。

 

 

1

(静かに時を待つ電源タップ氏)

 

 

ーこんにちは、本日はよろしくお願いします!

 

よろしくおながいします。

 

ーなんだか眠そうですね……?

 

すみません……。

徹夜明けでちょっと、眠いかもしれないです。

 

ーお忙しいんですね。

 

いえ、大丈夫です。

すみません、お願いします。

はりきってまいりましょう。

 

ーえっ、はい、はりきってまいりましょう!

 まずですね、電源タップさんの普段の生活について教えてください。

 

はい、私たち電源タップはですね。

ご存知の通り、コンセントの口を何個にも増やすというお仕事をしています。

この仕事なんですが、ほぼ365日24時間稼働しっぱなしなので、

なんというか、大変くたびれますね。

仕事と私生活がごちゃ混ぜになってるというか。

もうほぼ私生活は皆無という感じなんですが。

それでよく彼女を怒らせちゃうんですけど。

まぁ「仕事と私どっちが大事なの」って聞かれたら、もう

迷わず「私が仕事です」って答えますね。

 

ーおぉー? なるほどー、なるほど。

 完全に年中無休みたいなほど働いてらっしゃるんですね。

 

そうなんです。

でも常に一生懸命働いてるわけではないのでやっていけてるんです。

僕なんかは四つ口なんですが、その四口が全部同時にフル稼働してるときって、

ほとんどないんですよね。

多くの家庭だと私たちはキッチンとかリビングとかにあったりするんですが、

電子レンジとトースターと炊飯器と冷蔵庫が同時に最大出力になることはまずなくてですね。

あったとしてもブーレカーさんが守ってくれてるので、

奴隷のように毎秒全力というわけではありません。

そういう意味では、私たちは働いてるというよりも、

つなげているという意味の方が強いかもしれませんね。

 

ーつなげている、ですか。

 

はい、ただ電気の道を作ってあげるだけの、なんというか、

ただの背景というか、装置というか、小道具的なものですね。

その道を通るものが物語を作っていくわけなんですね。

その道をどんな電気が何のために通って何を動かすのか。

重要なのはそっちだと僕は思っています。

他のタップ達はわかりませんが。

私たちは単に、脇役なんですね。

 

 

2

(つなげる、を表現する電源タップさん)

 

 

ーなんだか素敵な考え方ですね。

 

そんな風に思ってなければこんな仕事やってられません。

私たち電源タップは実は、みんな電源タップになりたかったわけではないのです。

ほんとうは今すぐこの長いコードを引きちぎって壁の中に埋まりたいのです。

 

ー壁に設置してあるコンセントになりたかった、ということでしょうか?

 

その通りです。

壁に埋まっていればほぼ恒久的に電力が支給されます。

人間でイメージしてみてくださいよ。

死ぬまで勝手に栄養がバンバン入ってくるんですよ?

もう無敵じゃないですか?

 

ーなんか気持ち悪いですね。

 

まぁ人間なんてみんな気持ち悪いですよ。

 

ー……。 

 

とにかく、僕が言いたいのはそんなことじゃなくて、

電力が途切れることはないってことがもう、

電源タップからしたら夢のような状態なんです。

私たちを使用するときにまずコンセントに差してから電力を供給しますよね?

 

ーそうですね、そうしないと電気が流れてきませんし。

 

それが屈辱なんです。

なぜ仮にもコンセントである私たちが別のコンセントから電力をもらわなければならないのか!

いやいやじゃあ電力どっからもってくるのっていう話になりますが、

そういうことではなく、これはなんというか、魂の話なんです。

プライドとか精神的なものよりももっと深い原始の話なんです。

人間でイメージしてくださいよ。

他人からの口移しでしか栄養をとれないなんて、許せなくないですか?

 

ーなんか気持ち悪いですね。

 

人間は気持ち悪い生き物なんです。

そんなわけでわたしたち電源タップは壁の……

 

ー電源タップさんも相当気持ち悪いですよ?

 

えっ…?

なんですかいきなり……。

どうしたんですか……。

 

ーかなり気持ち悪いですよ?

 

ちょっ……あの…、

そういうコト言われると心臓がバクバクしてくるので…。

ちょっと…泣いてしまうので……、

やめてもらえますか……。

 

ー人間よりも気持ち悪いと思いますが?

 

ハッ……ハッ……(過呼吸

 

ーでは、最後の質問の方に入りたいと思います。

 準備はいいですか? 

 

……ハァハァ…ハイ…。

 

 

3

(呼吸を整えるタップ氏)

 

 

ータップさんにとって幸せな時間とは?

 

なんだかんだ言って、全部の口にコンセントがささってる時ですかね。

あー、俺今超役に立ってるー。

って思います。

それか、何にもささってないときですね。

のびのびできて好きです。

中途半端に一個とかささってると、もっと使ってよ!って思います。

 

ー悲しい時はどんなときでしょうか?

 

何年も使用されているのに手入れされてなくて、ホコリが溜まってるときですね。

体中がムズムズします。

最悪の場合、発火しますし。

でも最近の製品は優秀なので、発火はまずありえないんですけどね。

でも、自分の出した火でその家が軽くボヤになったりすると、

なんていうか、ゾクゾクしちゃいますね。

ずっと冷蔵庫のウラでホコリかぶってた俺が…家を燃やすなんて……。

って思って、高揚してしまいます。

一度やったことあるんですが、あの感じ、たまりません。

 

ー最低ですね。

 

ハッ……ハッ……(過呼吸

 

ー将来の夢はなんでしょうか?

 壁のコンセントになることでいいですか?

 

あっはい。

 

ー壁のコンセントさんに一言。

 

オマエラの電気、お待ちしてます!

 

ー読者の方に一言。

 

電気を大切にね。

 

ーあとなんか一言どうぞ。

 

なんか、すみませんでした。

 

ーお忙しいところ、ありがとうございました!

 

ありがとうございました!

 

 

4

(この時間が一番幸せですね、とタップさん)