2013.06.26

ホッチキスさん

みなさまこんにちは、小鳥チュンです。

第二回の今回は、ホッチキスさんにインタビュ—をしていきたいと思います。

いつも引き出しのどこかに潜んでいて、今か今かと出番を待ち続けるホッチキスさん。

使うときはいつも一瞬で、使い終わったらまた引き出しの中で眠るだけの彼ら。

紙と紙をその手でつなぐ行為はまさに絆そのもの。

そんな彼らの、心の闇に迫っていきたいと思います。

 

ホッチキス 
(内部構造を披露するホッチキス氏)

 

—こんにちは、本日はよろしくお願いします!

 

……。

 

—あれ、どうかなさいました?

 体調でも悪いでしょうか?大丈夫ですか?

 

……ステ—プラ—…。

 

—えっ?

 

すみませんが、ステ—プラ—って呼んでください……、

ホッチキスって呼ばれるとどうにもイラッとしてしまうんで……。

 

—ステ—プラ—ですか?

 

はい、それでお願いします。

正しくはそちらなので。

wikipediaでホッチキスで検索しても、ステ—プラ—に転送されるくらいなんで。

 

—はぁ…。 

 

なので、ステ—プラ—でお願いします。

 

ホッチキス
(自分はステープラーであると主張するホッチキス氏)

 

 

—わかりました。

 それでは早速質問です。

 

はい。

 

—ホッチキスさんは普段何をして過ごしているのですか?

 

ちょっ!ホッチキスやめて!!

 

—すみません、もう話が進まないので答えてください。

 

えっ…。そうですね。普段は寝て過ごしています。

長いときには一年も二年も使われずに、そのまま捨てられることもあります。

 

—なんだか切ないですね。

 

はい、基本的には切ないです。

そして、ずっと眠ってるというもの大変なものですよ。

多くの場合は真っ暗ですし。

暇につぶされそうになります。

 

—やはり、ホッチキスさんといえばあの、紙を挟んで針で留める行為が印象的ですが、

 あのときはどんな気持ちなのでしょうか?

 

あの時はわりと緊張してますね。ブルってます。

失敗したら針が一個無駄になってしまうので……。

彼らは大量に用意されてる場合がほとんどですが、私たちにとっては大事なパ—トナ—です。

彼らがいなければ、私たちのほとんどが歯の抜けたドラキュラみたいなものです。

 

—やはり、お互いの関係はとても深いものなのですね。

 

はい、我々は正確に彼らを押し出し、そして爪を内側にバランス良く折らなければなりません。

それは決して簡単にできる芸当ではなく、お互いの信頼関係が必要になります。

また、相性の問題もあって、それが悪いと何度挑戦してもうまく留められないことがあります。

 

—針との相性について、もう少し詳しく教えてください。

 

そうですね……、拳銃とその銃弾みたいなものでしょうか。

弾が古すぎてもダメだし、銃身が歪んでてもダメです。

銃弾を狙った部分にヒットさせるには、きちんとしたメンテナンスが必要になります。

そしてその引き金を引くのが人間です。

狙いを定めて一気に指を引く。

そう言った意味では、実際に手を汚すのは私たちホッチキスでも針でもなく、人間なんです。

 

—なるほど。

 

そんな感じです。

 

—今ご自身でホッチキスと言われましたが?

 

言ってません。

 

ホッチキスさん
(今日は雨なんですね……、と話をそらすホッチキスさん)

 

—最近では針のいらないホッチキスなんかも出てきてますが、そちらについて教えてください。

 

新型ですね。数年前に発売された、エコに配慮した商品ですが……。

あまり評判は良くありません。

やはり留める力が弱いのです。

紙同士の絡みだけで留めるので、留まることは一応留まるのですが、ひっぱったりしたときの外部からの力に極端に弱いですね。

しっかりと留めるのであれば、通常のものをオススメします。

 

—夢を教えてください。

 

夢ですか?

そうですね。

夢というか、私たちステ—プラ—の憧れなんですが、やはり大型のものですね。

大型のものになると、一度に100枚以上の紙を留めることができます。

学校などに置いてあったりするのですが、あの力強さには憧れます。

一度でいいから、一回の挟みで大量の紙を留めてみたいですね。

 

—ホッチキスさんの喜びとは?

 

紙をうまく留められたときはもちろん、この上ない喜びを感じます。

ですが、もっと嬉しいときがあるのです。

それは、暗闇で眠っている私たちを見つけたときの方々の表情です。

みんな口々に「ここにあったのか!」とか「見つけた—!」とか「あったよ—!」とか言います。

普段使われないから仕舞った場所を忘れてしまうんでしょうね。

そんなときは我々も「ここにいたんだよ—!」「ずっと待ってたんだよ—!」と叫びます。

もちろん、彼らの耳には届きませんが。

 

—なかなか胸がキュンとする話ですね。

 

ありがとうございます(照)

 

ホッチキスさん

(はにかむホッチキスさん) 

 

—それでは、そろそろ時間になりましたので、

 ちょっと最後にサクサク質問していきたいと思います。

 

どうぞ。

 

—ホッチキスの他に生まれ変われるなら、何になりたいですか?

 

ワニかカバになりたいですね。

それかマンモグラフィのおっぱい挟むやつ。

 

—最後に一つだけ挟めるとしたら何を挟みますか?

 

やわらかい布。

 

—ホッチキスを使っている人たちに一言。

 

思い出してあげてください、私たちのこと。

 

—ふるさとのご家族にひとこと。

 

ゴメン、今年も帰れそうにない。

 

—それでは、お時間となりましたので、このへんで! 

 ありがとうございました!

 

ありがとうございました。

 

 

ホッチキスさん

(インタビュー後、ステーショナリーの仲間達とともに)