2013.06.22

トイレットペーパーさん

どうもこんにちは、小鳥チュンです。

モノにインタビューしてモノの気持ちをわかろう!みたいなコーナーです。

記念すべき第一回目のインタビューはトイレットペーパーさんです。

トイレットペーパー(以下TP)は僕たちが生活していく上でかけがえのないモノですが、一体、本人たちはどんな気持ちなんでしょうか。

何を思い、どのように過ごし、その使命を終えていくのか。

神の領域ならぬ、紙の領域に踏み込んでいきます。



トイレットペーパー1
(インタビューを控えるTPさん、やや緊張気味)




─こんにちは、今日はよろしくお願いします。


こんにちは、こちらこそお願いします。

というか、初回なのに僕たちでいいんですか? 
トイレットペーパーですよ?
他にも立派なモノがたくさんある気がするんですが……。

─いいんです、大丈夫です、他に思いつくものがなかったので。
 それでは、早速インタビューを始めさせていただきます。
 TPさんは、なぜTPになろうと思ったのですか?

いきなり本質的な話ですね。
そうですね、気づいたら、ですかね。
目が覚めたときには薬局にいましたね。

店頭の特売ワゴンに乗ってたのを覚えています。
別になろうと思ったんじゃなくて、気がついたらもうすでに自分はTPでした。

─ではその、気がついたときの気持ちを教えてください。

僕は9個入りのパックに入れられていたんですが、隣のTP達とぴったりとくっついてる状態だったんで、びっくりしましたね。 近い……!と思いました。
もう、近いというより密着してる状態だったので……。
でも、戸惑いましたけど、すごく安心しました。

やっぱり、生まれたばかりの頃って言うのは、周りに仲間がいると安心するもんなんでしょうね。
もし一人でぽつんとしていたら、不安で泣いてたと思います。

2
(当時を懐かしむように語るTPさんの一部)


─周りにいた仲間について、教えてください。

仲間とはパックの中でいろいろ話をしました。
内容は詳しく覚えてませんが、お客さんとか店の人について、何か言っていたと思います。
あんまり詳細な分析とかじゃなくて、やさしそうな人だねとか、乱暴な人だなとか、なんとなく感じたことを、思い思いに口にしていました。
やはり僕たちは人間に作られて、売られて、買われて、使われる存在なので、人間が気になるのでしょうね。

─自分たちが買われたときや、他のTPが買われたときは、どんな感じでしたか?


自分たちが買われたときは、やっときた! と思って、安心しました。

しかも、買ってくれたのが優しそうな主婦の方で、とても嬉しかったですね。
周りのパックが買われると、やっぱり羨ましいなって思ってましたね。
TPっていう商品の性質上、何ヶ月も売れ残るということはほとんどないんですが、自分の中に早く使命を果たしたいという気持ちがあるみたいで、少し焦ったりしますね。
のんびりして待ってるTPもいたので、焦ってるのは僕だけだったかもしれないですけど。笑
でも、乱暴そうな人に買われていくのを見ると、少し悲しくなります。
大丈夫かなって、心配になります。
僕たちはTPなので、そこまで大切に扱ってもらえるような存在ではない、そういうことはわかってるのですが、ごくまれにひどい人もいるので、怖くなったりもします。

─ひどい人というのは、例えばどんな人ですか?

放り投げたりする人ですね、壁とか地面とかに。
そういうことをされると、すぐにボロボロになってしまいます。
あと、むやみに転がす人です。

転がされると紙がぴーって出ちゃうじゃないですか。
アレを戻して使う人はあんまりいなくて、ほとんど切って捨てられちゃうんです。
それをやられるのが一番の屈辱ですね。

TPさん
(仲間たちとともに)


─普段はトイレにいると思うのですが、何を考えていますか?

トイレ(個室)って言うのは特殊な場所で、必ず一人で入ってくる場所なんです。
人間というのは一人になると安心するみたいで、結構おかしな行動をとるんですよ。
鼻をほじったり小声で独り言を言ったり、変な顔をしてみたり泣き出したり。
そういう場面に立ち会えるのが、TPの醍醐味ですね。
人がいないときは、ずっとぼーっとしてます。
窓のあるトイレで風が入ってきたりすると、うとうとしますね。
眠くなります。 たまに、便器の方と会話をすることもありますが、特に内容はありません。
眠いねとか、春だね冬だねとか、そんな感じです。
だって、ずっと同じ場所にいるわけですからね。
とくに便器の方は、何年も同じ場所にそこにいるんですから、話すことなんて何もないんでしょう。

─使用後、トイレに流されると思いますが、その時の気持ちを教えてください。

流されるときは、爽快の一言ですね。
あの水の勢いで一気に暗い管の中をぐわーっと流れていく、それはもう至福のときです。
流れていく間に溶けて粉々になって、意識がなくなっていきますね。
それで、TPの人生は終わりです。
そこで初めて安心できるのだと思います。
使命を果たせたんだと。


─そろそろ時間がなくなってきましたので、ここからはシンプルな質問でいきます。
 ズバリ、悲しいときは?

使われる前に濡れるときですね。
濡れたらもう終わりです。
乾かしてもカペカペになってくっついてしまうので、もう、アウトです。

─うれしいときは?

うまく拭き取れたときですね。
ガッツポーズをお見舞いしてやります。

─TPに生まれてきてよかったことは?

ありません。

─このインタビューを読んでるTPの方々に一言お願いします。

勝って兜の緒を締めよ!
長いものには巻かれるな!

─二言ですね(笑)

あ、すみません、つい……。笑

─長い時間、ありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。

TPさん
(インタビューを終えて放心状態のTPさん)



(終)