2013.10.16

傘さん

どうもみなさまこんにちは、小鳥ツュンです。

 

本日のインタビューは傘さんです。

私たちをあらゆる雨粒から守ってくれる傘さん。

何百年も前から変わらない永遠のフォルムでありながら、

時に折り畳まれ、時に羽根を広げ、その姿は刻一刻と変わっていきます。

激しい風に立ち向かい骨が折れようともその精神は決して折れません。

そんな傘さんの雨と涙の物語に迫っていきたいと思います。

 

 

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(でかい顔で待つ傘さん)

 

 

─本日はよろしくお願いします!

 

よろしくお願いしますぅ。

 

─それではですね、早速インタビューに入らせていただきたいと思います。

 まず、傘さんのアンブレラな日常について教えてください。

 

おっ、まずですね。

我々は日々、こう、仕舞われてるわけですね。

くるくるっと巻かれてスコンと傘立てに入っております。

そこで何日か待ってるとお待ちかねの100%の雨が降ってくるんですね。

別に100%じゃなくても降ってれば何%でもいいんですけど。

そこで我々の見せ場ですね。

ブワッと勢いよく広がって、人々を傘から守りますね。

それでまた、空のヤツ晴れてくるんで、そしたら我々の出番は一段落ですよ。

またくるくるっと仕舞われてスコン、ですね。

そんな毎日です。

 

─やはり雨の日の方がお好きなのでしょうか?

 

そうですね、これは個人によりますね。

働くのが好きな傘は雨雨フレフレと思っていますし、

働きたくない傘はいつまでも晴れろと思っています。

乾いていくことに快感を覚えるタイプと濡れることが気持ちいいタイプがいましてですね。

彼らは半分ずつくらい存在しています。

私は割りとこう、なんていうか子供を産んだ後も働きたいタイプなので、やはり雨の日が待ち遠しいですね。

でも、梅雨などのあまりにも連続した雨の日はちょっと辛いです。

体が腐ってくるような感じになるんですよね。

人間と同じで、たまには休ませてあげないと、馬鹿になっちゃいます。

何本かをローテーションで使っていただけると助かります。

 

─なるほど、傘は雨が好きと思っていましたがそうではないのですね。

 それでは次に、その何年も前から変わらないフォルムについて、お聞かせください。

 

この形ですね。

いろいろ言われております。

なんか、何百年も前からこの形なので怠けてるんじゃないかって。

我々自身も、他になんかいい形ないのかなって、自分たちでも思うんですけど、何をやっても奇をてらったようなものしか出来ないんですよね。

進化がこれで終わってしまっているのだと感じています。

でも、何かもっと改善するべきところがあるんじゃないか、とも思います。

それが正しく改善された姿は、きっともう傘ではなく、違う傘になっているんだと思います。

次世代傘、みたいな。

それはきっと、未来そのものでしょう。

 

─いろいろな形態のものがありますが、やはり基本的な形は変わりそうにないですよね。

 

もしかしたら、そこまで頑張ろうってう気にならないんじゃないでしょうか。

技術大国の日本がいろんなテクノロジーに注力するみたいなのとは違うのでしょう。

所詮、傘なんて雨粒が防げればいいので。

なんというか、人間の雨に対する諦めみたいなものが、こんな状況を生んでるのではないでしょうか。

多分考えて考えて考え抜けば、我々はもっと進化すると思うんです。

可能性を自分自身で感じています。

内側からほとばしる魂の粒を、感じているのです…。

ホァァァ…

 

─傘さん自身はまだ進化できると。

 

人間が本気を出せば、不可能ではありません。

もっと我々に関心を持って、開発に注力して祭り上げれば傘の神様も、こう、手を差し伸べてくれるのではないでしょうか。

 

─進化した先には何があるのでしょうか。

 

決して雨に濡れない世界が待っています。

そうですね、傘を差すとそこがもう、屋内にいるように雨風しのげちゃうくらいの高性能多機能ブレラになります。

そんな世界、想像してみてください。

何よりも、雨に濡れた服がくさくなりませんし、電車なんかも快適です。

人類総屋内、みたいな世界です。

どうでしょうか。

いかがでしょうか。

 

─それはタマランですね。

 風も防げちゃうんでしょうか。

 

カンペキに防げますね。

風の無い世界が、その、なんつーか差した部分だけ広がります。

外部からのバリアですね。

その頃には我々も折れる事の無い強靭なバディになっていると思います。

今では、突風なんか吹くと絶対に勝てませんからね。

どちらかと言うと、雨よりも風の方が敵なのだと、薄々感じています。

雨で破壊されることはありませんが、風で死んでいきます。

折れたり、飛ばされたりして。

また、飛んでいった傘が他の誰かにぶつかってそこで怪我をしたりもするので、

ほんとに風だけは許せません。

捕まえてとっちめてやりたいですけど、風は透明で高速でさらに物体ではないので難しいです。
雲をつかむよりも難しいんじゃないでしょうか。
わかりません。

 

─風は凶暴ですよね。

 骨が折れるときはやはり、痛いのでしょうか?

 

元々の関節やつくりがそこまでしっかりしていないので、見た目よりは辛くないですね。

全身脱臼しているような状態です。

間接が折れるだけで骨自体が曲がっていなければ復活できますし。

でも、敗北感はハンパじゃないですね。

あと、人間の方にも責任があって、風の方向にうまく合わせてくれる人は大丈夫なんですが、明らかに折れるだろっていう方に持っている人とかもいて、そういう人を見ると髪の毛を毟り取ってやりたくなりますね。

このヘタクソ!

って、テレビの台風中継なんかを見て思います。

 

─台風のときは悲惨ですね。

 バッキバキになった傘がいたるところに置いてあります。

 

そうなんですよ。

昔ならもっと大切に使われてたと思うんですが。

コンビニに置かれているビニール傘なんかは本当に大変です。

いつの間にか、100円とか300円とか500円で売られてしまって、使い捨てです。

あれ、そもそもおかしいんですよね。

急な激しい雨が降った時にあの様なその場しのぎの傘を買っても、すぐに壊れて使い物にならなくなります。

でも急な激しい雨でなければ、人は傘を買わずに済ませてしまいます。

もっと強靭なのを買ってしっかりと雨風を防がないと、意味がありません。

その数百円のお金を地中海に投げ捨てるようなものです。

そういった、ものを大切にしなくなった人間の心も、ちょっとアレですね。

こういった悲劇のスパイスを生んでるんですね、きっと。

 悲劇のスパイラルを。

─ビニール傘の話が出てきましたが、よくコンビニなどで盗まれたりする代名詞でもあります。

 盗難について、お聞かせください。

 

そうですね、やはりビニール傘っていうのは匿名性が強いので、意識していなくても別の人に持っていかれることもあります。

さきほどもあった、物を大切にしない、というところに通じるのですが、本当に大事なものだったら名前を書いておくはずなのです。

名前でも何か目印でも、つけるはずなんです。

それをしないということは、逃げられてもしょうがないということなのではないでしょうか。

飼い犬に首輪も名札もつけなかったら、盗まれたり逃げられたりしてもそれは飼い主の責任です。

軽い気持ちで飼った犬を大切にしない飼い主が増えていますが、そんな感じでしょう。

少し高くても大事な物を一つ、買ってやってください。

そうすれば盗まれることもそこまでありませんし、長く使う事ができます。

そこんとこお願いします。



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(ちゃんとしたやつをご購入ください、と傘さん)


─わかりました。

 では話が変わりますが、日傘について教えてください。

 

日傘ですか。

私は雨傘で、畑違いなので、あまり詳しくないのですが、あの傘たちはまあ、ラクですよね。

ラクで、お洒落で、ちょっとなんか、違うかなって思います。

オマエ、傘なのか?

みたいな気がします。

まあ、もちろん傘なんですが、我々雨を防ぐ傘と一緒にしてほしくないところはありますね。

まあ、どっちも一生懸命で、どっちが頑張ってるとかはないのですが、まあ、たぶんこっちの雨傘の方が絶対に頑張ってますね。

冷たいですもん、雨。

それに引き換え日差しは暖かいでしょう。

日差しから人を守るみたいに思ってるかもしれませんが、あの傘たち日光浴してるだけですよ。

太陽の光を浴びるだけがお仕事だなんてほんといい身分です。

しかも、最近はデザインが増えてなんかビロビロしてたりしゃらしゃらしてたり、無駄なものがたくさん付いています。

あれを見てるとイライラしてきますね。

オマエそれ雨が降って来たらどうすんの?って。

言ってやりたいですよ。

でも言ったら言ったで、日傘なんで、の一言を返されて終わりですよね。

キイィィイ-!ってなります。

一緒の傘立てに私と日傘が入ってるとしますよね?

それで、私が雨の日に出て行くと、オツカレーッスみたいな感じで言うんですよ。

それで、晴れた日に向こうが出て行くときには、ヒザシキツソーみたいな事を言うんです。

もう、なんて言うんでしょうか。

生まれて来た環境(工場)の違いでこんなにも扱いが別れるのかって。

毎晩、涙を流してますね。

それで私が濡れて返って来て傘立てに入れられるとキャッ!ナニ-?ヌレチャーウ!とか言います。

これはもう雨傘に対するハラスメントですよ。

アマハラです。

今度訴えてみようと思います。

ほんと許せない…。

フゥフゥ…

 

─それでは折りたたみ傘について、お聞かせください。

 

あれ、もう日傘はいいんですか。

もっといろいろ言いたい事はあるんですが…。

折り畳み傘はですね、ちっさいボディで頑張ってますね。

鞄なんかにもすっぽり入っちゃって。

強度は心配ですが、あの子たちもがんばり屋さんなので、ちゃんと活躍してくれます。

ちょっとした小雨なんか降って来たときにはね、持っててよかったの万歳三唱ですよ。

でもやっぱり強度がね、心配なんですよね。

か弱い方々なので、あまり風の強い日には使用しないであげていただきたいです。

あと、あの折り畳まれた時のコンパクトさ、あれはもう素晴らしいものだと思いますが、

そこに至るまでの折りたたみがちょっと面倒ですよね。

ワンタッチで折りたたみの形から傘の形へ。

またその逆ができたらもう言う事なしだと思います。

今後の進化に、期待しております。

 

─それでは、最後の質問コーナーに参りたいと思います。

 

へえ。

 

─願いとは?

 

傘を差さなくて良い世界ですね。

哀しいですけど、それを望んでいます。

 

─夢は?

 

取っ手がなくなることですね。

雨を弾く傘の部分だけふわふわと頭上に浮かんでいたいです。

 

─好きな雨は?

 

弾丸のように力強く降り注ぐヤツですね。

打ち抜いてほしいです。

 

─嫌いな雨は?

 

霧雨です。

あのソフトタッチで鳥肌が立ちます。

 

─生まれ変わるならどんな傘になりたい?

 

なんていうか、日傘ですね。

 

─今までで一番悲しかったことは?

 

カラスのフンが落ちてきたことです。

 

─今までで一番嬉しかったことは?

 

カラスのフンから人を守れたことです。

 

─最後に、雨の方々に一言。

 

命ある限り、受けて立つ。

 

─傘のみなさんに一言。

 

体は濡れても、心はドライ。

 

─ありがとうございました!

 

ありがとうございましたー!




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(くつろぐ傘さん)