2013.09.04

時計さん

みなさまこんばんは、小鳥チュンです。

 

本日のインタビューは時計さんです。

電池が途切れるまで永遠に時を刻み続ける時計さん。

変わることの無い一定の速度で歩み続ける鉄の精神力を持つ彼ら。

終わることのない時の流れを打ち続けるその先にあるものは一体なんなのか。

彼らにとっての時間とは、宇宙とは、地球とは、そして人間とは…。

その真実にカチコチと迫っていきたいと思います。

 

 

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(もうすぐおやつですね..と時計さん)

 

 

─こんにちは! 

 本日はよろしくお願いいたします。

 

どうもこんにちは、よろしくお願いします。

 

─それではですね、まず、時計とは何か? 教えてください。

 

はい、えっと、いきなりざっくりしつつ本質的な質問ですね。

一言で言うと、時間を可視化したものです。

ほら、時間というのは、目に見えないでしょう?

でも、そこにちゃんとある。

それをわかりやすい感じにみなさんに提供するためのものです。

時計が無ければ、時間が見えない。

人間で言う、肉体みたいなものですね。

人間は精神や魂だけがあっても、見たり触れたりすることはできません。

そういった意味では我々時計は、時間の肉体的な役割を担っています。

 

─なるほどです、素敵なお答えですね。

 それでは、そんな時計さんの日常について、教えてください。

 

日常、ですか。

そうですね…。

わりとあっさりしていますね。

ほとんど無意識です。

気がついたら一日終わってるみたいな感じで、

また気がついたら夜が明けてるみたいな感じですね。

 

─無意識というと、眠っているような感じなのでしょうか?

 

眠っているのとは少し違いますね。

意識は目覚めているのですが、ぼーっとしている感じです。

人間で言うと、何も考えずに歩いている、といった感じでしょうか。

ほら、歩いているときって、歩いてることをあまり意識しないでしょう。

心臓とか呼吸とか、そういった完全にほぼ自動とかいうのではなく、

動作をしているんだけど意識していない、という感じですね。

おわかりいただけますでしょうか。

 

─なるほど、なんとなくわかります。

 つまり、常に動こうと思って針を動かしてるわけではないと?

 

そうですね。

癖みたいなものです。

そうした方が、ズレずに済みますし。

こう、一秒一秒神経質に動いていると、結構誤差が出てくるんです。

それよりも、無意識の中で一定のリズムを刻む方が正確に刻めるのです。

それと、電池を入れられてからそれが切れるまで、365日24時間休む時間はないので、なるべく、こう、ラクな感じにしようとしてるんだと思います。

 

 

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(なるべくラクにありたい、と時計さん)

 

 

─一瞬も休まるときはないのでしょうか?

 

ないですね。

だからたまに寝ちゃうときがあるんですけど…。

たまにふっと時計を見ると、秒針が一秒以上止まって見えるとき、ありませんか?

 

─ありますね、たまに。

 あれはなんなのでしょうか。

 

そのときですね、寝ちゃってるんです、実は。

あまりにも一定の動きなので、こう、やっぱりうとうとしてしまいますよね。

山崎パンのアルバイトでベルトコンベアに乗せられた水ようかんに延々とアルコールを吹きかけているとき、みたいな感じです。

自分がマシンの一部になった気がしてきます。

 

─アルバイトの経験があるんですか?

 

はい、時計になる前に少々。

まぁ、それは置いといてですね。

寝ちゃってるんですね。

それで、見られて、ヤバい!ってなって、また動き出すんです。

あのあと止まった分、ちょっと間隔縮めて進ませてつじつまを合わせてるんです。

人間自身、一秒を寸分違わず正確に捉えることはできません。

ストップウォッチなんかでちょうど10秒止めるやつみたいなのがありますが、

あんなので10.00秒とか表示されていても、10.0005秒とか、どこかでズレているんですね。

なので、正確に捉えることができないので、そこらへん結構、誤摩化してますね。

案外チョロいです。

 

─なんだか、時計さんはもっと几帳面なのだと思っていましたが、

 そういうわけでもないんですね。

 

そうですね。

我々も好きで時計に生まれてきたわけではないですし。

与えられた仕事をこなすのは当たり前ですが、手を抜けるところは抜きたいです。

そもそも、秒数なんてのはあまり気にしませんでしょう?

普段の生活で。

 

─確かにそうですね。

 気になる時間の最小単位としたら、一分くらいでしょうか。

 カップラーメンの三分とか、電車の時間があと何分とか。

 

そうでしょう。

大体、時間と分がわかれば生活には困りません。

時計によっては秒針がないものもありますし。

一秒一秒刻んでいくなんてのは、あまり意味がないのかもしれません。

でも時計の多くには秒針があり、常に動き続けています。

私が最近思うのは、時計は普段止まっていていいのではないかと思うのです。

 

 

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(時計は普段止まってていい、謎の発言をする時計さん)

 

 

─それはどういうことでしょうか。

 止まっていたら、時計さんの意味がなくなってしまいますが…。

 

人に見られてるときだけその時間を指し示せられればいい、と思っているのです。

人が見ていない間も動き続けるなんてちょっとナンセンスだと思いませんか。

見ていないテレビは消すように、見ていない時計は止まっていればいいんです。

人の視線を感じるセンサーなどをつけて、見られている時に、こう、電波時計的にキュッとその時間を指し示せればいいのだと思うのです。

まぁでも、そんなことしたらきっと時計そのものの値段が跳ね上がってしまうんでね。

現実的ではないのですが、いずれそうなってくれると我々時計も助かりますね。

技術の進歩を願っています。

そんな毎日です。

 

─なるほど、わかりました。

 日常はほとんど無意識ということですが、それ以外の時は何を考えているのでしょうか。

 

そうですね…。

あ、もうこんな時間か、って思います。

いつも。

それと、時計っていうのは結構、何年も使われるものなので、変化を眺めるのが楽しいですね。

 

─変化、というのはどういうものでしょうか。

 

我々の置いてある部屋だったり、持ち主だったり、空間だったりの変化です。

やっぱり人の変化が一番見ていておもしろいですね。

特に小さい子供、赤ちゃんなんか素敵です。

大人の方なんかは数年単位ではあまり変化はありませんが、子供は数ヶ月でどんどん変わっていきます。

大きくなったなとか、歩けるようになったのかとか、喋るようになったなとか。

そういうのを眺めているのが、ちょっと大げさですけど、生き甲斐ですね。

それと、部屋の模様替えが好きな人のところなんかは、楽しいです。

見える視点が変わって、違うものが見えてくるので。

 

─そういう楽しみがあるんですね。

 

逆に一人暮らしの会社勤めの方の部屋なんか、退屈ですね。

一日中、誰もいない部屋でコチコチコチコチ、動き続けなければいけません。

休んじゃいたいけど、電池がグイグイパワーを送ってくるので休めませんし。

わりと拷問に近いですね。

地獄です。

 

─電池がグイグイパワーを。

 

はい、グイグイパワーを、です。

 

─電池を抜かれた時は、ほっとするというか、休むことが出来るのでしょうか。

 

いえ、我々は電池を抜かれると、完全に死んでしまいます。

人間で言うと首をすぱっと切り落とされる感じでしょうか。

なので、休んでる、という感覚を得ることはないのです。

生きてるうちは歩み続けなければいけないし、止まる時は死ぬときです。

辛い人生です。

 

─それは厳しいですね…。

 そんな厳しい時計さんですが、アナログとデジタルの違いを教えてください。

 

デジタルはラクでしょう。

液晶の中だけでチカチカするだけで、時間が変わる時もチョイっと表示を変えればいいだけですし。

あれはズルいです。

しかも、わりと正確なのです。

アナログだと物理的に頑張らなきゃいけないので、大変なのです。

我々アナログが汗水垂らして木を削り出して彫刻を作るのに対して、彼らは3Dプリンタでブイーーッと作っちゃう。

そんな感じです。

まぁでもアナログの方が視覚的に時間の感覚が捉えやすいので、そこらへんは勝ってると思います。

 

─アナログ表示のデジタル時計もありますが、それについてはどうでしょうか。

 

あれは愚の骨頂ですね。

即刻、やめていただきたいです。

どうせやるならちゃんとカチコチする音も出してみやがれって感じです。

 

─アナログさんはデジタルさんを嫌いなのでしょうか。

 

まぁ、嫌いというか、そもそも根本的に違うんですよ。

我々アナログは時を刻みますが、彼らデジタルは、時を表示しているだけです。

この違い、おわかりいただけますでしょうか。

 

─すみません、詳しくお願いします。

 

詳しくもなにも、もうそれ以上なんも言えないんですけど…。

 

 

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(勘弁してほしそうな時計さん)

 

 

─ちょっとでいいので、もうちょっと詳しく、お願いします。

 

なんて言うんですかね、、若干勢いで言っちゃった部分もあるので詳しくと言われると少し困るのですが…。

アナログは、こう、時を作り出す、みたいな?

カチコチと刻んで、こう、空間とかに? 刻み付ける? みたいな感じなんスけど..。

アナログはなんか..ナンカ..ソッスネ..ただ表示してるだけ、みたいな?

時間のアウトラインをなぞるだけで、時を刻むことをしていないんです? みたいな感じですね…。

 

─なるほど…。

 

どうでしょうか…。

ご理解いただけたでしょうか…。

 

─なんとなく、わかりました。

 ほんとにうっすらなんとなくですが。

 

はぉ…。

 

─それでは、単発質問に入らせていただきたいと思います。

 

よしこい!

 

─一日が30時間だったら、あなたならどうする?

 

残業代申請します。

 

─時計の針がもう一本増えたら、どうする?

 

えっ?

 

─時計の針がもう一本増えたら、あなたならどうする?

 

そうですね…。

研修を受けさせますね。

 

─時計さんにとって幸せな時間とは?

 

時針、分針、秒針が一斉に動く時です。

○○時ちょうどのときですね。

あの揃ったカチっていう感じ、たまりまてん。

 

─辛い時とは?

 

電池が無くなってきて針がプルプルし出したときですね。

時計の6時〜12時までの部分、構造的に登らなきゃいけないんですよ。

それがなんか、登山…みたいなげんなり感ですね。

はやく電池変えてくれって思ってます。

 

─生まれ変わるなら何になりたい?

 

蝉ですかね。

暗闇の中で何年も過ごしてみたいです。

 

─好きなタイプは?

 

ちょっとルーズな子ですね。

 

─苦手なタイプは?

 

時間にうるさい子です。

 

─最後に、ご家族に一言。

 

天国で待っていてください、もうすぐ逝きます。

 

─…ありがとうございました!

 

ありがとうございました!

 

 

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(壁のお友達、ロールカーテンさんとともに)