2013.07.04
いくえみ綾 「私がいてもいなくても」(2)
こんにちは、橋本です。
ボリュームが多くなってしまったので、前回に引き続き、
今回もいくえみ綾さんの「私がいてもいなくても」の見どころについて。
つらつらと書いていきます。
と、前回のように文章で書いていこうかと思ったのですが、
どうにも物足りない…。
漫画のオススメなのに画がないと切ない…。
でもスキャンして載せるのはなんかイヤ…。
ということで、鉛筆でなぞることにしました。
イメージ映像的に捉えていただければ…。
読んだことのある方は思い出しつつ、手元にある方は確認しつつ。
読んだことがない方はいますぐブックオフへ……。
詳しい詳細は前回の記事を読んでみてください。
・あらすじ
主人公であるフリーターの安倍晶子(あべしょうこ)(18)がいろいろある。
・登場人物
安部晶子(あべしょうこ)フリーター
神田川真希(かんだがわまき)漫画家 晶子の同級生
日山一(ひやまはじめ)漫画家 真希の恋人
菅野剛史(かんのたけし)晶子の恋人、途中で別れる
細野カレン(ほその)真希のアシスタント
(※wikipediaでは剛司となっていますがコミックスでは剛史です)
袖野美穂(そでのみほ)晶子の友人
一巻ではわりといろいろあって、良い感じで終わりました。
自分の足で歩き出すぞ、的な印象で締まっていました。
その後、どうなるのでしょうか。
それでは二巻のオススメポイントです。
・こわばってる後ろ姿
第一話の冒頭で真希がPCを閲覧している場面があります。
後から描かれるのですが、掲示板サイトで書かれる自分の
誹謗中傷のスレッドを見ているところです。
この後ろ姿。
左肩が上がって右肩が下がって食いつくように見ています。
怒り肩です、力が入って非常に肩が凝る姿勢です。
背中の描写でこれほど心のこわばりを表現できているのがすごいです。
(カチカチする真希)
・映画のシーンへの場面遷移
安倍さんの兄のについての回想の中でガラスが割れて、そのまま映画のシーンに入ります。
ここで小さく出る「禁煙」の文字だけで映画館だということを表現しています。
ミニマル且つ何故か自然なシーンの移り変わりです。
・たまに出てくる元カレ
菅野剛史はこの巻の中に数ページずつ出てきます。
役割としては結構、話のクッション的な動きや会話をしています。
この人がいなかったらこの漫画の登場人物は全部暗い感じになるな、と思います。
浮気性でわりとろくでなしな感じの彼ですが、人間的で憎めません。
(日山の家に遊びに(邪魔しに)来る元カレ)
・どう見ても悪役の登場
真希のところで新しくアシスタントとして働く細野カレンの登場です。
Wikipediaの人物紹介には「外見も性格も難あり」と書かれていました。
(なんか占いみたいな書き方だと思いました。
確かに見た目はよくありません、そして中身もあまりよくありませんが、
読み返しているうちに、そこまで悪いやつじゃないのでは……、と思いました。
いや、悪いのは悪いんですけど、そこまで悪くない、みたいな。
熱の出ている真希を励ましているのも本心でしょうし、
会話も問題のある部分以外はわりと普通です。
真希の言う通り、気遣いができない子なのです。
(カレンの独特の空気に失笑するみなさん)
・電車のホームで兄を捜す安倍さん
失踪した兄を一度見かけた駅のホームで、安倍さんは兄を捜します。
とはいってもベンチに座って周りを見るだけですが。
このときの安倍さんの服装が素敵です。
コートがかわいいです。
ファッション誌をいちいち参考にして描いているのだと思いますが、
この漫画の安倍さんのファッションは全体的に素敵な感じです。
(安倍さんの目線でコマが区切られたりしています、が、線だけだとわかりません。涙)
・「オレら召使いじゃないんだけど」
剛史のゴリ押しで真希と何故か焼き肉を食べることになりました。
そこで真希は酒をぐいーっといって倒れてしまいます。
真希を家まで送ってきた彼(ら)に対して、日山がそっけない一言。
そこで剛史が「オレら召使いじゃないんだけど」と言います。
何故かこの台詞が好きなんです。
こういう時にこういうことを言ってくれる男の人っていいですよね。
その後、日山が真希の部屋に入っていくシーンが描かれますが、
このときの描写の処理の仕方もたまりません。
ドアだけが描かれるという、結構よく目にする表現なのですが。
良いです。
(毅然とする態度の剛史)
・傷心の母
兄が出て行って傷心の母です。
兄の部屋を掃除しつつ「帰ってきた時 きれいな方がいいでショ」と言います。
このシーンを見てわかった(と思う)のですが、母親は兄に恋をしていたのでしょう。
これは、捨てられた女がみじめに男の帰りを待つ図です。
これはやっかいです。
叶わない恋を二十年近くし続けていたのですから。
最後の方で、別の女(という言い方もどうかと思いますが)のところに
言ったことを安倍さんから告げられるとヒステリーを起こします。
もう諦めろ、母。
と思いました。
が、これも兄への歪んだ愛がこれほど深いというのを表していて良いシーンです。
このあと安倍さんは「私…って おかあさんの何かな」という台詞を残しますが、
母親は、あんたのことなんてどうでもいいのよ、と思っていると思います。
そして安倍さんもそれをわかっているのだと思います。
では何故そんな台詞を吐いたのでしょうか。
わかりません。
(出て行った兄の部屋を掃除する母)
・ポーチの奪い合い
安倍さんに「やっぱ自分で返して」と言われて、
日山はカレンのポーチをぽんと返されます。
その時の日山の表情がたまりません。
いかないで、みたいな。
自分にはどうせ血が通っていないのだ。
そう思って悲しくなっている感じがします。
どうなんでしょうか。
それと、ここでポーチを奪い合う場面があるのですが。
この場面がどういう場面なのかわからなかったのですが、なんとなく、
やっぱりカレンと会わせちゃいけない、という安倍さんの気持ちと
いいよ俺はどうせ血が通ってないのだからどうってことない、という
意地を張る日山の気持ちのやりとりを表しているのはでしょうか。
と思いました。
どうなんでしょうか。
(悲しげな日山)
・最後の母親
最後のページでまたドアが閉められます。
同時に「気をつけてね」という母親の姿がフラッシュバックします。
この「気をつけてね」というのは安倍さんが一人暮らしをするときに言われたもの
だと思ってるのですが、どうなのでしょうか……。
とにかくこのシーンなのですが、
どういう心理描写なのかわからないのですが、とても好きなシーンです。
何故が胸が締め付けられるというか、すごく悲しくなります。
家族、というフレーズで再生された記憶なのでしょうか。
表札の名字が一緒に描かれているし。
実際のところはわかりません。
が、とてもいいシーンです。
(気をつけてねの母)
というわけで、「私がいてもいなくても」の二巻のみどころについて、お伝えいたしました。
本当は今回で二巻と三巻を書いてしまいたかったのですが……、
長くなってしまいました……。
そんなわけで、次回は三巻の見所について、お送りいたします!
お楽しみに!!
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