2013.08.02
映画 「かしこい狗は、吠えずに笑う」
どうもこんにちは、橋本です。
本日、紹介したいのは、「かしこい狗は、吠えずに笑う」という映画です。
渡部亮平さんという1987年生まれの若き映画監督の作品です。
この映画、とても、すごい映画でした。
強くてきれいで、怖くて切ない、そんな映画です。
予告では、女の子二人のやりとりの映像が切り取られています。
これだけを観ると、女の子同士のラブストーリーなのかな、とか。
友情と愛情の微妙な心のニュアンスを描く青春映画なのかな、とか、思うと思います。
が、この映画はそのような甘酸っぱいだけのものではありませんでした。
映画館の紹介文にはこのように書いてあります。
———-
ブルドッグのように不細工に生まれた熊田美沙(17)は普通の生徒から蔑まれ、チワワのように可愛く生まれた清瀬イズミ(17)は普通の生徒から妬まれている。全く異なる二人だが、与えられた運命という同じ苦しみ、痛みの上に生きていた。
痛みを判り合えた二人は交流を深め友情を築いていく、が――。
———-
が――。
の後、なんなのでしょうか。
紹介文だけ見ると、これまた青春物語っぽい感じがしますね。
なのですが、話の内容はすさまじいものでした。
実際に観ていただきたいので詳しくは書きませんが、なんというか。
熱湯でできた氷に触れるような感じというか。
アツアツのアイスクリームを食べているという感じ、というか。
さっきまで昼間だったのに瞬きをしたら夜になってた、というか。
コーヒーカップの乗り物だったのがいきなりジェットコースターになってた、みたいな感じですね。
もう戻れない、という感じです。
観ているうちに、この映画から逃げ出したくなる気持ちと、
もっと追いかけたくなる気持ちが同時に湧いてきました。
薄いガラスでできた透明な階段を上っていくような感じでしょうか。
恐怖と美しさが、一緒になってやってきます。
その目でぜひとも、観ていただきたいと思っています。
この映画には、いくつもの「予感」が張り巡らされています。
「伏線」ではなく「予感」です。
この映画の中の人々は、観る人にいろいろな事を予感させます。
その予感が観ていくうちに当たったり、外れたりします。
予告での女同士のラブみたいな雰囲気も、その予感の一つだと思います。
何かを思わせる、予測させるシーンが多くあります。
と、わたしは感じました。
その予感がいくつも重なって、話はクライマックスに流れていきます。
そして、それまでしていた予感を遥かに凌駕する強力な事態が明るみに出ます。
おそらく、その差によって衝撃を受けるのだと思います。
この映画はこういったジャンルの映画だ、というイメージを持たせておいて、
そのイメージを最後に貫く感じでしょうか。
でも、衝撃的な出来事なのに、不自然でない、違和感もない。
その出来事を包むだけの世界観が、少しずつ構築されていっているのだと思います。
そして、その見せ方が、多分、非常にうまい。
時系列的にも、ただ直線的な流れではなく、その事件の後のシーンを挟んだりとか、
そういった演出も、ともてうまくできていると思います。
内容の他にも注目したい部分がいくつかあります。
予告の冒頭にもありますが、
「渡部亮平 第一回 長編監督作品」
とあります。
渡部亮平さんの初監督作品です。
さらに、自主制作映画です。
制作会社などは一切介入せず、すべて、自らの手で作り上げたもの、らしいです。
少ない資金や期間の中で、作られたはずなのですが、
それなのに、この映画の力はすさまじいのです。
物語の構成や見せ方、音楽や映像の色、切り取り方など、
本格的というか、ものすごく心地よく進んでいきます。
女子校が主な舞台で、主人公が女子高校生なのですが、
男性の方が描いたとは思えないほど、女の子の心理がきれいに撮られています。
生理痛の話なんかも出てくるのですが、
「友達や知り合いなど、いろいろな人にどんな痛みか聞いた」
と監督は上映後の質問コーナーで言っていました。
また、出てくる女子高生のエキストラの方々も、すべて知り合いに頼んだとのことでした。
高校の後輩(?)とか、そのようなことを言っていた気がします。
制服も知り合いから集めまくったとか。
カメラマンの方も自分で探したと言っていました。
ほんとうに手作りなんだな、と思いました。
この映画はそういった、監督の努力や人間性が作り上げたものだと思います。
(Facebookにこの映画のファンページがあるのですが、
(エキストラの方に人手が足りなかったので男性がいます、
(という写真が載っていました。
また、自主制作映画なので、宣伝費もなく、宣伝会社などの手は一切ないので、
このようにして口コミで広めるしかない、とのことでした。
なので、そういった意味で、今回の記事を書きました。
ほんとうにすごい映画なので、ぜひとも観ていただきたいと思います。
明日、8月3日から8月9日までアンコール上映なるものがあるので、ぜひどうぞ。
2013年 8月 オーディトリウム渋谷
日程:2013年8月3日(土曜)〜8月9日(金曜)
時間:連日18時50分〜
場所:オーディトリウム渋谷
http://a-shibuya.jp/archives/5915
大阪でも上映するそうです。
2013年8/9月【大阪】第七藝術劇場
日程:2013年8月31日(土曜)〜9月6日(金曜)
時間:20時55分〜
場所:第七藝術劇場
住所:大阪市淀川区十三本町1-7-27 サンポードシティ6F
この映画を観て、もし良かったら、それを誰かに伝えていただければと思います。
それでは!
また!
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