2013.07.25
映画 「パーマネント野ばら」
こんにちは、橋本です。
今回紹介するのは、映画、「パーマネント野ばら」です。
菅野美穂さん主演の2010年5月に公開された映画で、
原作は西原理恵子さんの漫画です。
他のジャンルについてもそうですが、
映画について語るときに、何をどのように語ればいいのかわからないのですが、
頑張って伝えようと思います。
切ない気持ちになりたい方には、ぜひとも見ていただきたい映画です。
この映画を初めて見たとき、
最後のシーンが終わり、音も映像も切れた瞬間、泣きました。
エンドロールを眺めながら泣いてました。
とても切なく悲しいのですが、それだけではなく、
きちんとした救いがあって、それで涙が出ました。
恋、愛、依存、やさしさ、日常、欠落、喪失、トラウマ、救済。
そんな要素がとてもうまく融合して、バランスよくちりばめられています。
wikipediaより、あらすじです。
——–
ある田舎の漁村にある唯一の美容院「パーマネント野ばら」。なおこ(菅野美穂)は離婚し、娘を連れて母の経営するこの美容院に身を寄せている。美容院は町の女たちの「たまり場」と化していて、あけっぴろげに自分たちの悲哀や愚痴をこぼし合い、罵り合い、笑いあっていた。
なおこの二人の友人も男運が悪く、みっちゃん(小池栄子)はフィリプンパブを経営しながらヒモ男に金をせびられ、ともちゃん(池脇千鶴)も付き合う男が皆暴力男で、捨てられてばかりいる。なおこ自身も、地元中学校教師のカシマさんと密会を繰り返していた。しかし、愛情を感じながらもなおこは掴み所のないカシマさん(江口洋介)の態度に、戸惑いと孤独を感じていた。
——–
wikipedia (役者名は加筆しました)
と、これだけ見るとなんだかよくわからないと思いますが…。
ひとつずつ、書いていきたいと思います。
・様々な種類、かたちの愛情が重なりあったストーリー
これは、ラブストーリーだと思います。
ラブストーリーなのですが、
このラブというのは「男女の恋愛」という意味だけではなく、
親子の愛情だとか、地元への愛情とか、友人への愛情とか、モノとかコトとか空気とか、
そういったあらゆるものに対しての「人間が根本的に持つ愛情」が産む物語だと思います。
しかも、そのラブも決して温かいものだけではなく、
残酷なものだったりつらいものだったり、
いろいろな形のラブが出てきます。
冒頭のYouTubeの予告を見ると、わりとあったかほのぼの系の映画かな、と思うかもしれません。
出てくる役者も話す台詞も、音楽も映像もロケーションも、雰囲気的にやわらかい感じです。
ですが、物語が進むにつれて少しずつ暗い部分や謎がうまれていきます。
そして本当にラストの数分でその暗い部分や謎が明かされるのですが、その時の衝撃が、
こう、なんていうか、胸を悲しい針でつらぬかれるような、そんな気持ちになります。
ただ、見終わった後、切なかったり悲しかったりはしますが、暗い気持ちにはなりません。
それは、映画の中でいくつもの温かいシーンや笑えるシーン、やさしいシーンなどがあり、
それがクッションになっているからだと思います。
悲しさと優しさが同じくらいの量で配合されている感じです。
その悲しさと優しさの大元になってるのが「愛情」になっていて、
それがまた、なんか残酷だったりするのですが。
愛情があるから優しくもなれるし笑えたりするし、幸せな気持ちになったりする。
それと同じ理由で、傷つけられたり苦しんだり狂ってしまったりする。
愛情のもつ力、というのがすごく良く表現されてる映画だな、と思います。
・「女」が主役
この物語の主人公は、なおこ(菅野美穂)ですが、
映画全体としては「女」が主役なのだと私は思います。
男はちょっとエピソード的に出てくるだけで、
物語はほぼ、女たちだけで進んでいきます。
正確な時間を計ったらそんなことはないのかもしれませんが、
印象では圧倒的に「女」が強いです。
でも、男はあまり出てきませんが、女たちが話すのはいつも男の話です。
誰といつやったとか、結婚しろとか別れろとかいい男紹介しろとか。
だから、この映画の中での「男」というのは、ぼんやりとした象徴でしかなく、
そうやって「男」をぼんやり描くことで、「女」の輪郭が自然と際立っています。
女性の方が観たら、何か共感できることがあるのではないでしょうか。
・自然な時系列の行き来
良い映画は大体「全部良かった!」と思ってしまうので、
それについて話をするとき、あまり多くを言うことが出来ません。
キャストが良かった演技が良かった監督が良かった脚本が…音楽が…カメラワークが…
すべてを「良かった」の一言で済ませたいのですが、
それだけでは何も伝わらないので、少しだけ細分化してみようと思います。
まずとりあげたいのは、監督がうまかったのかな、と思います。
吉田大八さんという監督で、最近だと「桐島、部活やめるってよ」の映画を監督した方です。
「桐島〜」もおもしろい映画でした。
このパーマネント野ばらでは、物語の流れとして時系列が行き来する場面が多く、
現在、幼少期、複数の人物の回想シーンなど細かい区切りで進んでいました。
それが物語の筋にしっかり沿ってバランスよく配置されています。
「桐島〜」の映画もそうでしたが、時系列の並べ方がとてもうまいのだと思います。
(同監督の「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」と「クヒオ大佐」も観ましたが、
(あまり覚えていません…。
あと、回想と見せかけてただの夢だったりとか、そういった演出がうまいです。
よくよく考えると不自然なことでも、一つの流れで観るとなんの疑いもなく観ることができます。
それは、音楽の差し込み方も、うまい要素の一つになっていると思います。
分析をしていないので絶対そうだ、とは言えないのですが、
あるシーンには決まってこの音楽が流れる、ということを無意識のうちに認識させておいて、
少し不自然な移り変わりでもその音楽を流すと頭が勝手にそのシーンと結びつけたりとか、
そういう手法も使ったりしているのかな、と思ったりしています。
・すべては引き立て役である
なんだか書いているうちに、音楽も映像もキャストも演技もロケーションもすべて、
最後のシーンを引き立てるためのものだったのではないか、と思ってきました。
この映画ですが、8割くらい、ほのぼのとしたシーンで構成されています。
あとの2割はなんか嫌なことがあったりつらいことがあったり。
全体的に、ほんとうに楽に観ていられる映画です。
自然にあふれた港町で、ほとんどが山で昔ながらの店ばっかりで、
出てくる人たちも隙だらけで平和で人間らしい人たちばかりです。
男に振り回される様子も、コメディタッチというか、笑える感じで描かれていて、
観ていてつらい部分などほとんどありません。
闇が見えるときは時々で、それも、なおこ(菅野美穂)の表情が強ばったりするくらいです。
予告の映像にも泣いてるシーンがありますが、あの部分でもやわらかい音楽が流れています。
クラシックギターをつまびいた、日常のBGMに使っている音楽でした。
トラウマに関するシーンも多々、出てきますが、それもそこまで重く描かれていません。
なんかおかしいな?
と、思い始めた頃に映画はラストに向かっている頃で、そこで衝撃をうけます。
すべて計算されて考えられたものでしょうから、
やっぱり監督がすごいのかな、と思います。
・やっぱりキャスト(配役)と演技がいい
演技がうまいのはもう、その人個人の技術でしょうからそこに言及することもないと思いますが、
やっぱりキャストがうまいのでしょうね。
印象的だったのが、菅野美穂と夏木マリと宇崎竜童です。
菅野美穂はほんとうに恋をしているように見えました。
少女のようにはにかんだりはしゃいだりする姿が、とてもうまかった。
この少女のように、というのもポイントなんですが。
夏木マリは、まぁ、すごい、の一言ですね。
あれって演技なの? と思わせるくらいすごいです。
もたいまさこと同じニオイを感じます。
宇崎竜童は役柄がハマってました。
男で唯一、映画の中でちゃんと喋る人だと思います。
でも喋る内容はロクデナシな感じですが。
「男の人生は、真夜中のスナックや」
って言ってます。
それと、おばちゃん軍団もとても良い味を出しています。
パンチパーマが似合う。
喪服で川にジャブジャブ入るシーンがあるのですが、笑いました。
あと、何故かみなさん日本酒を湯のみで飲んでいます。
そういう部分も細部までこだわってるなぁと思いました。
・ちゃんと救われる
衝撃のラスト、みたいなことを書いてますが、それと同時にちゃんと救われます。
救われるというか、救済の描写で終わります。
これについて、詳しく書きたいのですが、書きたくないのです。
愛情のかたちが違うと埋められない穴がある、的なことを言いましたが、
埋められなくても支えたりすることはできるんじゃないか、という感じです。
それは私が勝手にそう解釈しているだけで、観る人によっては全然違うかもしません。
最後のシーンを自らの目で確かめてください!
・まとめ
とにかく、とてもラクに観られる映画なので、お仕事終わって帰ってきた後、
お風呂上がりにビールなどを飲みつつ観てください。
でも、一人で観ない方がいいかもしれません。
胸が痛くなるので、なるべく誰かと観た方が良いかと思います。
でも、一人で観て泣いてもいいと思います。
最近映画観てないな、というアナタ、ぜひともご覧下さい!
今回はこんな感じでした!
読んでいただいてありがとうございます!
それでは、ではまた!
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