2013.08.08
眠りの店番
客か
ああ、また眠ってしまった
この子は、いつも漫画を買いにくる
何年も前から
大きくなったもんだ
いつもわたしがカバーをつける長い間、何を考えているのかしら
この子は何年も前から漫画を買いにくるけど、わたしはそのもっと前からここで店番をしている
何歳だろう、とか、考えているのかも
自分でも、ふと思うわ、わたしは今何歳だろう
ほら、もう少しでカバーが付け終わる
最近、この子は値段を言う前にお金を置くようになった
わたしが言うのが遅いのだけどね
四百二十円、ちょうどいただきます
ありがとうございました、を言う前に足早に店を出ようとする
でも自動ドアもわたしと同じおばあさんで、動きがのろいのよ
すこしのあいだ、ほんの数秒、立ち止まる
その間に顔が少し見えるの
無表情だけど、やっぱり
新しい漫画がとても楽しみ、ていう顔をしてるわ
わたしが世界で一番好きな顔
老いぼれた自動ドアが重く開いて、すべりこむみたいに去っていく
また、だれもいない店番が始まる
もう少しくらい、眠ってもいいでしょう
(終)